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連載-17- なるほどこれでなっとく!「著作権」 広告

スペイン知的財産事情

この原稿は、スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社であるリーガルスタジオ社の真覚久美子氏とカルロス・アバディン氏(弁護士)の著作です。

連載-17- なるほどこれでなっとく!「著作権」 広告

No.264 Febrero 2009

この連載を始めて早2年半。今回で著作権についての連載は終了し、次回からはスペインで産業財産権と呼ばれる商標権、特許権、意匠権について5回連載します。お楽しみに。

広告とは、新聞・雑誌・テレビ・ラジオの媒体広告、折込やダイレクトメール、セールスプロモーションにPR、屋外や交通広告、インターネット広告のようなメディアを通してある情報を宣伝すること。著作権で最も問題が多いのがこの分野です。

日本の経済産業省の特定サービス産業動態統計によると、2007年度の広告売り上げは約5兆8000億円。そんな日本の広告の中で世界的にその品質の高さが認められているのが「インタラクティブ広告」。双方向性が特徴で、07年のカンヌ国際広告際でユニクロ社の[UNIQLOCK]が「サイバー部門」のグランプリと、メディアの枠を超えてアイデアを審査する「チタニウム部門」でグランプリを受賞、今までに世界214か国2億2000万人以上がアクセスし、多くの人が自分のブログにリンクしているという画期的な代表例。変わったところではNECの「デジタルサイネージボード」という顔認識技術を使って、ディスプレイの前に立った人の顔から性別と年齢層を自動判断して、随時適切な広告を表示するというもの。混乱してはいけないのは広告の著作権とは別に特許や意匠権として権利化できる広告技術や商業メソッドがあることで、たとえば前述の「デジタルサイネージボード」を使った広告技術や、タクシーの前部座席の後ろ側に付けられた広告の掲示方法などは特許として登録することができ、それらの媒体に載せられる広告は、使用される写真や音楽などの著作権とは別に、広告を作品として登録することが可能で、登録後は「Copyright ?2009 LEGAL STUDIO. AII Rights Reserved.」というようにコピーライト表示に登録した年度を加えて表示し、保護できます。

新製品やサービスの広告を作るために広告代理店はたくさんの企業秘密を扱い、それらは厳重に守られる必要性があります。例えばあるファッションブランドのキャンペーン。広告代理店はモデル、ヘアーメイク、スタイリスト、照明、カメラマンなどを使って商品の広告写真を撮りますが、これらのスタッフ全員と事前に秘守義務契約を結ぶ必要がありますし、その他のすべての広告制作過程も注意が必要です。しかし時には知らずに似通った広告を作っている場合もあります。大切なのは今までの連載記事同様、該当する権利を確認し適切な処理をすることです。

また広告には通常複数の著作権がある他、商標権、肖像権、パブリシティ権、不正競争防止法なども関ることがあるので注意が必要です。例えば芸術大学の生徒が授業でモデルのヌード写真を撮り、後日彼はこの時の写真を広告代理店に売り、その広告代理店はその写真を広告に使い、写真のモデルはある日マドリッド中の屋外広告に巨大な自分のヌード写真が使われているのを目にして、裁判を起こしました。結果、生徒に写真の著作権はあるものの、モデルのプライバシー権が認められ、モデルに無許可で広告という本来の目的以外の利用を行った生徒が損害賠償金を支払い、広告は撤去されました。

広告制作をお金を払って依頼しても、その広告のすべての権利が依頼主に帰属しないことも要注意です。例えば新聞広告用に作成した広告を雑誌に転用する場合、雑誌に掲載する著作権は基本的にはそれを作った人または組織に帰属します。したがって問題を起こさないためにも、広告主はすべての媒体の著作財産権を得ることのできる契約を事前に結ぶべきでしょう。いずれにしても契約内容にかかわらず著作人格権は作者に帰属します。

この他にも著作権侵害や法規制すれすれの比較広告などいろいろなケースがあります。比較広告は、公正な比較を基に適切な表現で消費者に誤認させないことが大切です。誰よりも最新の、際立った宣伝を目指す広告。今後もますます最新テクノロジーを使った広告媒体や新たな伝達方法が増え、人々を楽しませることでしょう。