大きな転換期を迎えた英文特許明細書

−マルドメ(マルでドメスチック)の

特許明細書の時代は終わり、

これからは

グローバル特許仕様書の時代−

 

何が何でも右から左への流通屋ではスキルアップしない。スキル不足が知財部門の空洞化を生み出す。空洞化が進めば責任を取らない体質がうまれる。

責任を取らないから事故が多発する。
事故が多発すれば膨大な金が余分にかかる。
金がなくなれば(取られれば)本来の仕事ができない。
仕事をしなければ金もかからないし、無責任にもなれる。
無責任になれば、やる気が出ない、知恵が出ない。

あとは会社が潰れるしかない。儲かるのは「丸飲み」を受けたところだけだ。

 

1.中国が出てくるまで

中国が、国内を、資本主義市場として開放したことに合わせて、安いコストでの生産を求めて、アメリカ、日本、欧州が雪崩を打ったように中国に進出を始める前までの世界においては、日本は世界第二の経済大国として、主として、先進工業化諸国の市場で、大きな地盤を固めてきました。

元気をなくしてきたアメリカと欧州の製造業を尻目に、日本は、得意とする分野での工業製品を、海外には輸出と現地生産でシェアを拡げ、国内市場ではすべて日本製でまかなえるほどの勢いを見せてきました。

日本 高度成長で豊かな国内市場 時計・カメラから 自動車、家電、半導体、IT、工作機械、などなど 現地生産 輸出 欧州 製造業弱体 米国 製造業衰退 その他 製造業離陸前

 

2.世界市場のフラット化

これまで、日本企業の製品の主な購買客は、国内と米国と欧州という豊かな先進工業化地域に住む人々でした。

その地図が、今、大きく変わってきています。

それらの先進国での購買力あるいは購買意欲が衰えて行く一方で、BRICsと称される新興勢力の購買力が高まり、また、石油収入で豊かになった中近東をはじめ、アジア諸国やラテンアメリカの購買力も増え、その結果、世界の市場はフラットになりつつあると言えるでしょう。

 

3.日本の市場規模は世界の5%

日本は世界の石油の6%を消費しています。石油が経済の原動力であることから推測すると、この消費の割合が世界の中での日本国内の購買力と言えるでしょう。

また65億人の世界人口の中で日本の人口1.2億人は2%弱でしかありません。しかし、世界人口の3分の2は食糧など生存に必須のもの以外を購入する力は無いと見られるので、市場規模から見れば約20億人が対象となりうる最大数でしょう。この20億の中での日本の人口比は約5%ですから、人口からみてもこれが国内市場の規模と言えるでしょう。

従って、この小さな国内市場だけを対象としていれば、世界の中での競争力は危うく、また優秀な技術を持っていながら国内だけを視野に入れていれば、せっかくの発展のチャンスを逃すことになるでしょう。

 

4.チャイナ・シフト

これまでの大量生産型の製品の多くは、今や中国にその生産拠点が移り、世界の工場とまで呼ばれるようになっています。

もともと、産業革命以来、大量生産型の工業製品は、その発祥の欧州から米国に中心が移り、次いでそこから日本に移ってきた歴史があります。その流れから見ると、今、中国にシフトしているのも必然のことと言えるでしょう。

いったんシフトしてしまえば、大量生産・大量消費型の工業製品において、中国と同じ土俵で正面から戦うことは、もはやありえないでしょう。

 

5.生存型産業を中心として

世界は今、地球温暖化による気象異変と、温暖化の最大の原因となった石油の消費し過ぎによって、その生産量が頭打ちになったという大問題に直面するようになりました。

それらへの対策という面から眺めると、このことは、同時に、日本にとって大きなチャンスと言えるでしょう。なぜならば、持続可能な社会が必要としている技術の多くにおいて、日本は世界の先端にいるからです。持続するため、あるいは生存するためには、食糧、水、自然エネルギーによる発電、効率の良いエンジン・モーター、公害防止、医療医薬品などなどが必要であり、いずれも日本が得意とする分野のものです。

地球温暖化による気象異変:水と食糧の不足、伝染病の増加 石油・天然ガスの生産量が頂点:安い石油時代の終わり 農業技術、上下水道システム、太陽・風力発電、省エネのエンジン・モーター、公害防止技術、医薬品、など 日本が得意としている分野

 

6.経済が成長する時代の終わり

石油を大量に消費することで発展してきた経済は、安い石油の時代が終ったことで、新たな局面を迎えました。すなわち、経済は永久に成長していくものだという神話も終わりを告げています。

このことは、製造業の本業からだけでは、もうこれ以上大型の投資は無理であり、また、国としても税収の増加はこれ以上は望めない事を意味しています。

従って、税金で賄われていた公共の研究機関(大学と独立法人)での研究開発も、(できるだけ)研究費は自分で稼げ、という時代になっています。民間も公的機関も、自分で稼ぎながら研究開発を続ける努力が要求されていることになります。

うまく行ってもフラットな経済規模 縮小していくことも覚悟しておく必要 研究開発費は自分で稼げ 民間企業 大学・独法

 

7.オイル・マネーの一極集中

日本をはじめ工業化先進諸国は、経済を維持するためには、価格が上がっても、石油の消費を劇的に減らすことは不可能でしょう。従って、石油の代金は途方も無い規模で、産油国に集っていくことになります。

その集ったお金はどこへ流れて行くのでしょうか。金融や穀物取引の投機や不動産購入に行くだけでなく、工業生産への投資も増えるでしょう。

これからの世界で、有効な技術を有する企業は買収の対象になるでしょうし、また、それらのマネーが銀行の代わりをして融資してくれることにもなるでしょう。

 

8.製品輸出から現地生産

これまで日本(製造業)企業が世界を席巻してきた製品分野の多くが、中国との競争に晒されるようになりました。また、インドも猛烈な勢いで中国を追いかけています。

つまり、国内で製品を製造しそれを輸出するというやり方では、もはや発展が見込めなくなっています。

また、中国での合弁による現地生産は、中国が、最終的には自力で、製造業において世界一になることをねらっている国であるがために、極めてリスクの高い事業となっています。

これは、国内企業の製造業をもう一度盛り上げる意図などはまったくない米国や欧州での現地生産とは、大いに事情が異なることを意味しています。

先進工業化諸国での現地生産 米国・欧州 現地で力を無くした製造業の肩代わり 新興工業化諸国での現地生産 中国・インド 自国製造業成長までのつなぎ

 

9.これまでの日本の大手企業の特許戦略

大手製造業を中心としての、これまでの特許戦略は、製品の指向に合わせて、豊かな国内市場とそこでの競争に重点を置いて展開されてきました。

つまり、特許の取得は、まず何よりも国内において、自社製品のシェア拡大を支援することが目的とされてきました。

その目的のために、つまりライバル会社の参入と拡大を抑えるために、自社製品の周りを膨大な数の特許で囲う戦術が取られ、海外特許出願・取得も、国内のライバル会社との海外市場での競争を主眼として行われてきました。

豊かな国内市場 自社製品のシェア拡大という市場戦略に資するための特許戦略:出願数:毎年40万件 たくさんのライバル会社 海外市場でも日本企業との競争のため 欧州へ4万件 米国へ6万件 海外出願は従の位置付け

 

10.工業分野の多くが成熟

この10年弱の間に、日本企業が得意としてきた工業分野の多くで、製品技術も市場も「成熟産業」と位置されるようになりました。つまり、考えられる技術改良はほぼ出尽くし、消費者も今すぐ欲しい商品はもう無いという成熟期になっています。さらに、この成熟は企業の再編統合をもたらしています。

このため、国内で、これまでのように、ライバル企業と特許出願と取得の数で争うことは、その意義を失いつつあります。

また、大きく眺めても、近代工業化技術の多くは、既に頂点を極めており、画期的な技術開発が数多く生まれる状況は期待できなくなっています。

従って、必然の流れとして、これから、国内の特許出願数は、年々大きく減っていくものと予測されます。

国内特許出願40万件 2007年

 

11.特許事務所の環境

これまでの環境で述べてきたように、国内の特許事務所は、激烈な製品競争を日本企業同士で繰り広げている大手企業からの大量の特許出願に、対応してきました。

製品の市場シェアを維持しまた拡大する戦略の一環をになって、他社の力を削ぐための特許戦術が取られていたわけです。

この要望と需要に対応するため、特許事務所の多くは、国内出願を主眼とした明細書の大量生産を行い、しかも競争排除の要望に応えるために、発明の範囲をできるだけぼかす明細書作成に取り組んできました。

海外市場でも競争相手は主に日本企業ということで、海外出願においても、その国内明細書をそのまま英語や中国語に翻訳することで対処してきました。

大手製造業 製品シェア拡大(防衛)の道具としての特許戦術=数多くの特許で製品を囲む 特許事務所 発明の範囲をぼかした明細書の大量生産 米国・欧州・中国 海外においても国内競争相手だけを視野において

 

1.従来の大量生産型の製造業において

これまで、安価で高品質の大量生産型工業製品で、世界の頂点に至った日本のメーカーも、中国・インドといった新たなライバルの出現で、これまでどおりのやり方で事業を続けることができなくなっています。

また、彼らと同じ土俵の上で戦うのは、その桁違いの人口と民衆の活力と、かつての明治期の日本のごとく、資金提供から税金軽減などなどの国策がとられていることから見ても、不可能でしょう。

対中国・インドなどには、従来型の工業製品において、核となる技術だけはおさえて、ライセンス・ローヤルティ収入を確保するなどの策が必要なはずです。

また、常に、中国やインドの一歩二歩前を行く製品の開発に全力を挙げ、その核技術を知的財産権利化しておくことも重要です。

大量生産型工業製品で世界を制覇してきた日本のメーカー 知的財産化 中国・インド、など 従来工業製品の核技術 一歩二歩先んじた製品技術

 

2.独自技術で生きてきた中堅企業において

会社の規模は大きくなくとも、他者がまねできない技術を中核にして、元気良く持続・発展している企業は、日本に数多くあります。

これらの企業の多くは、国内市場だけでは需要は大きくないため(分野が特殊だから市場規模は限られている)、早くから世界全体を市場としてきています。

その世界進出の方法の多くは、これまでは、製品の輸出という形で行われてきました。

これからは、単に製品輸出だけでなく、進出先の国において、自分も製造したいと望む企業とアライアンスを組むことで、あるいはまた、国策プロジェクトの下、政府資金で工場建設を要望されたりして、自社の事業規模の拡大を図るチャンスがますます増えて行くでしょう。

そのためには、進出先の地域において、自社の核技術の権利化(知的財産化)は欠かせぬ要素となるはずです。

大量生産型工業製品で世界を制覇してきた日本のメーカー 世界市場でコア技術の知的財産化で アライアンスを組みまた、政府資金で

 

3.大学・公的研究機関において

米国の動きには20年近く遅れましたが、日本においても、大学や公研究機関に対し、研究開発成果をお金に換えることが、国の政策として進められています。

具体的には、米国のシステムをまねして、TLO(Technology Licensing Organization)という組織で運営が図られています。しかし、これまでのところ、あまり大きな成果は上がっていないようです。

自分で稼ぐというこの動きを広げるためには、ライセンス・ローヤルティ先を、世界に求める必要があります。国内の市場だけを見ていては、その規模から見ても、中国やインドに従来工業製品がシフトしている流れから見ても、まったく不十分でしょう。

大学公的研究機関(独立行政法人)その中の機関としてTLO 世界市場にライセンス 発明技術を知的財産化して世界からローヤルティ収入

 

4.資金が豊富にある国を活用

石油は産業と社会の血液であり、これに変りうるエネルギーは、残念ながら、この地球上には存在しません。その石油の供給量は頭打ちになり、従い、これからは価格は上がっていくばかりとなります。

血液であるがために、価格が上がろうと、先進工業化諸国は買い続けるしかありません。そのため、お金は石油産出国に溜まる一方となってきています。

その膨大な資金を使わせてもらう手を考えるべきでしょう。幸いなことに、石油産出国のほとんどは、製造業に縁が遠く、自ら手を下して展開する熱意も感じられません。つまり、お金は出すが、製造は一から十まで任せるというスタイルは大いにありえます。また、限りある石油資源のお金を国の将来のために有効に投資しようとする動きも出始めています。

この資金を得るためには、自社技術を知的財産化しておくことが必須の要件となることは言うまでもないところです。

自社技術を知的財産化して 石油産出国=金持ち国 工場建設 事業経営 全面請負

 

1.特許出願の重点を世界に置く

ここまでに、激変する市場環境とその対策をざっと眺めてきました。

その対策を具体化する鍵は、まず何よりも、特許出願の重点を、海外に置き、国内出願は従とする方針変更にあると思われます。

世界で特許権を獲得し、それでもってライセンス・ローヤルティ収入を図ったり、製品を防衛したり、また世界市場での展開を図るパートナーを獲得したりするためには、世界の特許仕様書の標準(米国と欧州のスタイル)に基づいて作成する必要があります。

これまでの慣習に従い、また国内の基準で作成された特許明細書からは、世界で効力を発揮する仕様書は作れません。

同時に、その逆は可能で、世界向けに作成した仕様書から国内向けを作成することに障害は無いはずです。

まず世界に向けての特許仕様書を作成する 世界の地域別に必要修正をして出願する 国内向けに修正して出願する

 

2.自分の発明技術を売り込むための特許仕様書

特許仕様書は特許権を獲得するためだけの文書ではありません。特許権の取得は目的ではなく、自分の(自社の)発明技術をお金に換えるための一つの手段に過ぎません。

その技術をお金に換えるためには、特許仕様書の構成と記述は、好むと好まざるに関わらず、欧米流の文書である必要があります。日本人特有の考え方と表現の仕方では、欧米では通用せず、またその欧米流に基づいているその他の国々でも通用しない事は明らかです。

発明技術を核にしての事業展開に投資を受ける 共に事業を展開したいパートナーを得て協業・提携で世界展開を図る 明確・明快英文特許仕様書で発明技術をお金に換える 製品製造を希望する相手にはライセンスを与えたりローヤルティを取る

 

3.特許仕様書はアートである

特許仕様書は世界の特許庁の審査を通り、特許権を獲得できればそれで十分という文書ではありません。

特許仕様書は、

(1)自分(自社)の発明技術を明確に位置づけ、囲い込んでその権利の主張をはっきりさせ、

なおかつ、

(2)その発明技術の有効性、有用性を相手に理解してもらうための、一つの「アート」です。つまり、権利書であるとともに、相手(投資先、技術の買い手、提携先など)を説得するためのプレゼンテーション資料である必要があります。

融資してくれる融資してくれる相手に 技術を買ってくれる相手に 提携を望む相手に 特許仕様書はアートである 発明技術を守るために

 

1.特許仕様書は知的財産の核

特許仕様書は知的財産(Intellectual Property)の中核であることを再確認し、同時にその他の著作権仲間の一員であること、つまり、クレーム以外は技術仕様書の一種であることを認識する必要があります。

 

2.世界標準の文書形式とはどのようなものか

特許仕様書は特殊な構成の文書ではない事を理解します。

一般文書・仕様書 現状説明 問題点分析 課題設定 対策・企画 実施計画 アブストラクト (または)サマリー 特許仕様書 発明の背景 先行技術とその問題点 発明の概要 (詳細説明)実施例 クレーム(請求)*この部分だけが特別 アブストラクト

 

3.なぜ国内向け特許明細書の翻訳ではだめなのか

国内向けに作成された特許明細書をそのまま英語に翻訳しても世界で効力を発揮できる特許仕様書にはなりません。

(中国語への翻訳も事情は同じです)

なぜ駄目なのかを、さまざまな実例を材料に、オリジナルの日本語文章と英語文章を対比しながら確認します。

意味不明の文章(意図的なあいまい表現) 論理的な説明ができていない 背景と発明概要の記述がクレームをサポートしていない 意味不明の文章 (文章表現力が低すぎる)クレーム(請求)の仕方が米・欧・中国とは異なる 英文特許仕様書の元にはなりえない国内特許明細書

 

4.明快な日本語文章で元を作る

明快な英文特許仕様書を作成するためのすべての出発点は、論理的に構成された文書を明快な日本語文章で記述することにあります。

それでは、そのような日本語文書を誰が作れるでしょうか。

長期的には、発明技術者の日本語による表現力の向上は欠かせない要素です。

実務的には、プロフェッショナルなテクニカル・ライターを選別し、もしいなければ、短期日で養成する必要があります。(特許仕様書のように重要な文書作成は、本来的には、プロの書き手が必要です。)

科学・技術事項を日本語で表現する難しさの理解 技術者の日本語文章力向上が必要であることの認識 プロのテクニカル・ライター が必要であることの認識

 

5.文書制作・発行の品質保証体制を作る

外部に公表する文章は、一つの制作物として、製品と同じように、品質検査と保証の下に発行されるべきです。

特に、特許明細書のように重要な文書が、品質監査を経ずに出願されるというようなことは、ビジネスの常識から見てもありえないことです。

文書の品質保証体制をどのようにすべきか、考えます。

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